こんにちは!Kdanライターの津山です。コロナ渦で世界の経済が停滞する中、台湾は順調に経済成長を続けている国としていま注目を集めています!
台湾でビジネスを始めた場合、最初に難関となるのが契約書です。
台湾の法律は日本と似ていると言われますが、労務関連など、日本より法律の要件が厳しい場合もあり、国内取引以上に気をつけて契約書の内容の策定・締結を進める必要があります。
今回は台湾ビジネスの契約書に関して、特に雇用契約書、合弁契約書、技術供与契約書を取り上げ、各契約書の記載ポイントと注意点を記載しました。
この記事を読めば基本的な内容が全てわかります。台湾でビジネスを進めたいけど、契約書の記載内容がわからず困っている事業者の方は必見です!
目次
台湾ビジネス契約書のポイントと注意点
台湾をはじめ海外でビジネスを行うにあたり、欠かせないのが契約書です。
契約書の作成にあたっては、後々訴訟が起きないようにするためにも、交渉内容は人任せにせず、事前に将来発生しうるリスクを十分に考慮して契約書を作成することをお勧めします。
今回は、台湾ビジネスで必要な契約書の種類別に記載のポイントと注意点をまとめました。
雇用契約書
台湾の労働契約には、無期契約と有期契約の2種類があります。
継続的な業務は無期契約となり、臨時的、短期的、季節的及び特定の業務については、一定の条件を満たした場合(例:6ヶ月以内の非継続的業務)有期契約となります。
台湾では労働基準法上、書面で労働契約を作成しなくてはならないという規定はありません。
しかし実務上、労使間の権利義務関係を明確にするために、外資系企業の多くが契約書を書面で作成しています。
<雇用契約書作成時のポイント(労働基準法施行細則第7条)>
- 就業場所および従事すべき業務
- 始業および終業時刻、休憩時間、休暇、祝祭日、休暇申請方法並びに交替制をとる場合のシフトに関する事項
- 賃金に関する調整、計算、精算、支給日および支給方法
- 労働契約の締結、解除および退職
- 解雇手当、退職金、その他の手当および賞与
- 労働者が負担すべき食費、宿泊費および作業用具代
- 安全衛生
- 労働者の教育および訓練
- 福利厚生
- 災害補償および一般傷病補償
- 遵守すべき規律
- 賞罰
- その他労使の権利義務
<雇用契約書作成上の注意点>
台湾では、労働者保護の観点から2020年1月より労働事件法が施行され、労働事件が起きた場合の雇用主の負担が大きくなりました。
多くの立証責任が雇用主に課されることとなり、今まで以上に契約書の内容に注意する必要があります。
例えば賃金ですが、今まで賞与は給与のような労務対価性のある賃金とは異なると考えられてきました。
しかし労働事件法37条では「雇用主が行う給付は賃金と推定される」と定められ、万が一訴訟になった場合は、雇用主が「賞与に労務対価性がないこと」を証明する必要があります。
そのため今後は雇用契約書の中で「賃金」と「奨励性給付」の項目を分け、内容を定めておいたほうがいいと思います。
内容に法律違反がないように注意を払いつつ、規定や範囲は出来る限り細かく定めることをお勧めします。
技術供与契約書
最後に技術提携に関する契約書について紹介します。ビジネスのグローバル化に伴い、台湾と日本の企業間で技術供与契約を結ぶケースは増えてきています。
今のところは日本企業が技術を供与するケースが多いため、ここでは技術供与者の観点から注意すべき事項をまとめます。
<技術供与契約書作成時のポイント>
- 対象範囲(技術の内容、対象地域、サブライセンスの有無等)
- 提供方法(コンサル、技術指導、マニュアル提供等)
- 対価(ロイヤルティ)
- 表明保証(技術供与者が第三者の権利を侵害してないことの表明)
- 共同開発した製品、技術供与先での改良の取り扱い
- 機密保持義務
- 侵害品を発見した場合の通報義務
- 契約終了時の取り扱い
- 契約書の使用言語
<技術供与契約書作成上の注意点>
技術提携に関する契約も技術提供契約、共同開発契約、専利実施許諾契約など様々なケースがあります。
私は実際、過去に契約書の内容と契約の実態が異なり、双方で言い争いとなるケースを多数見てきました。将来の紛争を避けるため、契約双方者で十分に話し合い、ニーズや変更を随時契約に反映させることが大切です。
また公正取引法や、独占禁止法等に関する法令に抵触しないよう、時には専門家の意見を求めながら十分に気をつけて作成しましょう。
合弁(Joint Venture)契約書
最近は台湾の企業と合弁会社(JV)を設立するケースも少なくありません。その際に役に立つのが合弁契約書です。
合弁契約書は、合弁会社の設立、出資比率、管理・経営及び利益の分配等について取り決めた内容を書面化したもので、「投資契約書」や「株主協議書」等と呼ばれることもあります。
この合弁契約書も法的手続上の必要書類ではありませんが、出資者の権利義務の明確化や会社の重要事項を適切に定款に反映するため、出資者全員による合弁契約書の締結が実務上不可欠です。
<合弁契約書作成時のポイント>
- 基本事項 (組織の種類、名称、所在地、資本総額、株式総数、払込資本額、発行株式の種類、一株あたりの額面金額、主要な営業項目、など)
- 決算期
- 出資構成
- 出資・設立スケジュール等
- 役員、経理人および法人代表者
- 株主総会の詳細
- デッドロック事項 (株主総会や董事会で決議に至らなかった場合の最終合意期限や対処方法を定めておく項目)
- 配当時期や配当性向等
- 出資者が出資以外に有する権利義務
- 競業避止義務の有無と内容
- 出資持分の売却・譲渡
- 契約違反への対応
- 合弁契約の解消
- 準拠法
- 紛争の解決方法
- その他一般事項(秘密保持義務、連絡先など)
<合弁契約書作成上の注意点>
合弁契約には様々な形態があるため、ここで記載した項目は一例です。
重要なことは、将来のリスクを低減するため、合弁会社の業績不振や撤退を想定した事項についてもあらかじめ検討し、自社に不利にならないような合弁契約書を作成することです。
また市場の状況や相手との関係性が変化した時にも対応できるよう、事前に十分に内容を検討しましょう。
まとめ
本日は台湾でのビジネスに欠かせない3つの契約書についてポイントと注意点を紹介しました。
皆さんもこの記事を参考に、また詳細な点については専門家に意見を求めながら、将来にわたり長く台湾とのビジネスが続けられるような契約書を作成しましょう!
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