こんにちは、KDANライターの辰濱です。
国内外の旅行を楽しむ人が増え始め、世界中で「オーバーツーリズム」が問題になっています。
オーバーツーリズム、すなわち「観光公害」とも称されるこの現象は、特定地域への観光客の過剰な増加により、地域の生活環境や自然に悪影響を及ぼすことを指します。
日本でも、2023年10月に日本政府によるオーバーツーリズム問題解消に向けた重要な会議も行われるなど、昨今の大きな課題となっています。
オーバーツーリズムの問題に対する有効な解決策として、「デジタル化」の推進が挙げられており、多くの自治体や観光業者がこの動きに乗り出しています。
例えば、西武鉄道では、2023年7月10日から、東京・西武新宿駅正面改札付近に、12カ国語の翻訳に対応できるディスプレイを設置する実証実験をスタートし、その運用性の高さが評価され、同年11月から本運用されています。
今回の記事では、オーバーツーリズムが引き起こす問題点を説明した後、デジタルを利用した解決策や実際の事例をご紹介したいと思います。
地域観光業務に勤めながら、デジタル化で、これらの問題を効率的に解決したいとお考えの方は必見です!
目次
オーバーツーリズムの概要
オーバーツーリズムの概要と日本の現状
オーバーツーリズムとは、観光客の過剰な増加によって、地域住民の生活や自然環境に悪影響を与え、結果として観光客の満足度まで低下させてしまう状況を指します。
世界的にオーバーツーリズムが問題となっている中、日本でもこの問題は深刻化しています。
大きな要因としては、日本の訪日観光客数が大幅に増えていることが挙げられます。
観光庁によると、2023年の訪日客数はコロナ前の80%に相当する2506万人に達し、旅行消費額は過去最高の5兆2923億円を記録しました。
参考:訪日客消費が初の5兆円超 23年、人数はコロナ前8割に|日本経済新聞
ではなぜコロナ前の8割の増加なのに、オーバーツーリズムがここまで深刻化しているのでしょうか。
その理由として、コロナピーク時に多くの観光・飲食業の売り上げが落ち込み、企業が生き残るために人員を削減したこと、その後も、人材が戻ってこず人手不足に陥っていることなどが挙げられます。
2023年5月に株式会社ダイブと全国旅館ホテル生活衛生組合連合会青年部が実施した調査によると、全国のホテル・旅館の約9割が「人手不足を感じている」と回答しています。
急激な観光客増加と人手不足などの要因によって、引き起こされるオーバーツーリズム。
次に、オーバーリズムが地域社会に与える具体的な問題を説明します。
地域社会に与える具体的な問題
オーバーツーリズムにより地域が直面している課題は、多岐にわたりますが、主要なものとしては以下のようなものがあります。
地域の生活環境・自然景観の悪化
観光客の急増は、地域の生活環境に負の影響をもたらし、ゴミ問題や騒音などの公害を引き起こしています。
また、過剰な観光活動により、自然景観や文化遺産などの資源が破壊され、その結果、観光地の持続可能性が損なわれるなどの状況が発生しています。
地域コミュニティとの摩擦
海外からの観光客が増えると、文化的な差異や行動様式の違いから、地域住民と観光客との間にトラブルや不和が生じることがあります。
具体例として、神奈川県鎌倉市の例が挙げられます。
人気漫画「スラムダンク」に登場する江ノ島電鉄の踏切が「聖地」としてSNS上で人気になり、近年、多くの外国人観光客が殺到しています。
電車の通過時に観光客が道路に出て写真を撮ることが多く、交通の妨げになっているほか、踏切周辺の私有地に観光客が無断で入ることもあり、地域住民からは観光客のマナーに対する懸念が高まっています。
地域観光業における業務負荷・人材不足
オーバーツーリズムによって、地域観光業やサービス業者は運営の課題に直面しています。
特に労働力の不足は、サービス品質の低下や運営効率の損失をもたらし、観光客の体験品質に悪影響を及ぼします。
また、十分な交通機関、宿泊施設、衛生設備などのインフラが整っていないことも、ピーク時の混雑対応や緊急時の対応能力に限界をもたらしています。
以上にあげた問題点の他にも、オーバーツーリズムによる経済的損失や不均衡など、問題は多岐に渡ります。
これら多くの問題を解決するためのヒントとなるのが、「デジタル化」です。
次に、デジタル化によって、具体的にどのように問題を解決することができるのかを見ていきます。
デジタル化によるオーバーツーリズムの解決策
デジタル化による解決策を考える際に参考となるのが、2023年10月に国土交通省・観光庁が発表した「オーバーツーリズムの未然防止・抑制に向けた対策パッケージ」です。
対策パッケージ内の「観光客の集中による過度の混雑やマナー違反への対応」では、以下4つのカテゴリに合わせて、さまざまな解決案が紹介されています。
・受入環境の整備・増強
・需要の適切な管理
・需要の分散・平準化
・マナー違反行為の防止・抑制
上記カテゴリ内の実例では、デジタル技術を利用した対策案も多く紹介されています。
次では、それらの解決案もいくつか紹介しつつ、大きく3つの観点から、デジタル化による解決策を紹介したいと思います。
データ管理による過度な混雑の管理・分散化
デジタル化によって、観光スポットや周辺エリアの混雑状況を可視化・分析することができます。
観光客の流れや行動パターンを収集・分析し、混雑状況をリアルタイムで配信することで、特定地域や店舗での混雑を防止したり、入場者数を制限したりすることが可能になります。
以下にその一例をご紹介します。
実例:箱根観光デジタルマップを活用した混雑状況の回避
多くの国内外観光客で賑わう、神奈川県の箱根では「箱根観光デジタルマップ」を活用したオーバーツーリズム対策が行われています。
箱根観光デジタルマップ powered by STAYNAVI
この「箱根観光デジタルマップ」を使うことで、AI技術を用いた渋滞予測を確認したり、飲食店、駐車場、タクシースタンドなどのリアルタイムな混雑情報を確認することができます。
さらに、混雑していない地域の飲食店からの割引クーポン配信の機能も備えており、観光客の流れを分散できることが期待されています。
多言語対応による外国人観光客の受け入れ強化
海外旅行者とのトラブルの大きな原因の一つとして、言語の壁が挙げられます。
2023年には年間963万人の外国人観光客が日本を訪れ、韓国、台湾、中国、香港、アメリカなど、地域観光業においても、各言語での対応が求められています。
これらの対策として、多言語翻訳を搭載した観光業支援のデジタルサービスの活用が増えています。
例えば、海外旅行者のチケット購入や運賃支払いの際に、多言語対応の案内システムを導入することで、外国人観光客とのコミュニケーションの障壁を低減することができます。
また海外観光客と地域住民とのトラブルについても、SNSやデジタル広告を通じて、多言語の注意喚起を行うことで、トラブル回避の効果が期待されます。
実例:京都府デジタルサイネージ設置による多言語での情報提供
京都府では、主要な観光玄関口や交通結節点に、多言語対応可能なデジタルサイネージの設置を支援しており、現時点では14台設置されています。
タッチパネルで多言語切り替えができ、各交通会社の時刻表、イベント情報、周辺地図など、一人一人のニーズに合わせた観光情報を提供することが可能になりました。
観光業務の効率化による人材不足の解決
観光に関わる業務は多岐に渡り、特に中小企業では人材不足の問題が深刻化しています。
ホテルや旅行業では、外国人人材の確保と同時に、それだけでは解決できない人材不足を補うため業務のDX化も進められています。
例えば、AIやロボットを利用したホテルカウンター業務の自動化や、ツアー会社での旅行契約書の電子化、顧客予約管理システム(PMS)の導入など、様々に活用ができます。
実例:ホテルや旅館での対面電子署名によるチェックイン簡略化
ホテル業界では、宿泊者名簿の電子化や対面署名機能による、チェックインプロセスの簡略化が行われています。
ホテルの宿泊者名簿の正確な記載を確保するための措置として、本人確認を行うことが求められています。
しかし電子契約システムを使用すれば、事前にデータを入力してもらっておいて、最後に名前だけサインするだけでチェックインが終わります。
フロントの混雑も解消され、記入漏れやミス防止など情報の管理も楽になり、顧客、従業員の双方にとって、多くのメリットをもたらします。
以下の記事でもホテル・旅館業界のDX事例を詳しくご紹介していますので、ご参考ください。
観光業務やホテル業務の電子化を始めるなら、DottedSign(ドットサイン)
DottedSign(ドットサイン)は、台湾人が開発した、観光業務やホテル業務のデジタル化を支援する電子署名サービスです。
現在世界167カ国でサービスを展開しており、台湾や香港で使われている繁体字の対応はもちろん、日本語、英語など、多言語に対応しています。
日本を訪れる台湾人観光客の数は年間400万人と、年々増えており、繁体字でのデジタルサービス提供は必須となってきています。
台湾発祥の DottedSign(ドットサイン)は、台湾や日本はじめ、多くの海外観光者向けにも、最も適した電子署名サービスと言えます。
DottedSign(ドットサイン)のサービスを利用すれば、観光関連の書類業務の効率化を図れるだけでなく、対面署名機能も備えているため、ホテルや旅館業界でのフロントでの対面署名にもぴったりです。
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