今回は労務管理担当の管理職の方に向け、労務管理の役割、人事管理との違い、労務管理を行う際の注意点や効率的に行えるツールをご紹介します。
こんにちは、Kdanライターの津山です。現在、企業で部下を抱える管理職の皆様の中には、日々、労務管理で頭を抱える思いをされている方も、おられるのではないでしょうか。
2022年4月から全企業に義務付けられたパワーハラスメント防止措置や、コロナ禍による働き方改革関連法の推進によって、企業内における労務管理の役割は、以前に比べて更に重要になっています。
現在では、労働力人口が減っており人材確保が難しい、転職が当たり前になり離職者が後を絶たない、外国人労働者の受け入れ対策も考えなければならない、など、職場環境は大きく変化しており、管理職が担う労務管理の仕事範囲は、広がり続けています。
しかも、今や昔と違い、部下へのサービス残業の押し付けや、飲みニケーションで、職場問題や労働力不足を解決する、といったことは、難しくなっています。もし、労務管理についての理解が不十分だと、離職者が増えるばかりか、最悪の場合、訴訟トラブルになるリスクも招きかねません。
そこで今回は、労務管理を任されている管理職の方に向け、労務管理の役割、人事管理との違い、労務管理を行う際の注意点を、まとめてご紹介します。また、最後に、今後の労務管理を効率的に行えるツールを、ビジネスツールに精通したKdanからご紹介します。
目次
管理職が行う労務管理の概要と2つの目的
最初に、管理職に任される労務管理の概要と目的についてご紹介します。目的の明確化は、労務管理の内容を実務に生かすために、非常に重要ですので、ぜひしっかりと押さえておいてください。
まず、労務管理とは、「雇用契約書に記載した労働条件を適切に守ると共に、労働者が働きやすい環境を整え、労使関係の秩序を維持する」ことを指します。
具体的には、労働の期間、労働時間、給与、手当、業務の内容等の管理に加え、メンタルヘルス対策や、社会保険関係の管理など、さまざまな領域が含まれます。
労務管理における2つの目的は以下の通りです:
- 労働力の調達・育成と活用
例:企業が必要とする労働力を確保しつつ、労働者が働きやすい環境を整え生産性を向上させる
- 労使関係の安定的な維持
例:法令が正しく遵守されているかを厳しくチェックし、訴訟等の労務リスクを回避する
コンプライアンスが重視される現在、日本の大手レストランチェーンのように、労務管理が行き届いていないと、すぐニュースに取り上げられ、企業イメージが悪化するリスクが高まっています。
企業の規模に関わらず、正しい労務管理なしには、ビジネスが成立しない状況であると考えた方がいいでしょう。
管理職が労務管理を行う際に知っておくべき2つのこと
では次に、管理職の皆様が労務管理を効率的に行うために、ぜひ知っておいていただきたいことを2点ご紹介します。それは、労務管理で対応すべき範囲と、労務管理でトラブルになりやすい部分の把握です。
その1. 労務管理で対応すべき範囲と人事管理との違い
企業内でも混同されがちなのが、労務管理と、人事管理です。労務管理の仕事で対応する範囲を明確にするため、それぞれの概要と、具体的な業務を、以下にまとめます。
- 人事管理:社員一人一人に関する個別管理を適切に行うこと
- 労務管理:労働力(社員全体)の集団管理について適切に効率的に行うこと
分類 | 仕事 | 内容 |
---|---|---|
人事管理(個別社員についての一連の管理) | 雇用管理 | 社員の募集、選考、配置、昇進、離職、退職などに関する管理 |
教育訓練 | 社員の能力形成に関する管理(OJT、自己啓発、社内セミナーなど) | |
インセンティブ管理 | 社員のやる気を引き出す管理(人事考察、成果配分ルールなど) | |
服務管理 | 社員のサービスを一定に保つための管理(職場マニュアル整備など) | |
人間関係管理 | 社員に職場への帰属意識を起こさせるための管理(懇親会、苦情処理など) | |
労務管理(職場労働者全体に関する一連の管理) | 労使関係管理 | 労働組合と経営者の間の交渉や関係を円滑にする管理や労使協議の制度化 |
賃金管理 | 賃金体系の管理や賃金額の管理 | |
労働時間管理 | 法定労働時間や残業時間、過重労働の管理 | |
安全衛生管理 | 作業の安全やメンタルヘルス対策 | |
福祉管理 | レクリエーションの実施や社会保険の対応 |
上記の仕事は、人事部と、各部署で労務管理を担当する管理職が、役割を分担して対応すべき内容です。
まだ管理職になって間もない方などが、上記の全てを労務管理と捉えてしまうと、管理職自身も多忙になり、メンタルヘルスを損なうリスクもあります。実際、調査でも管理職が増える30〜40代は、心の病にかかりやすいという結果が出ています。
労務管理について不明瞭な点があれば、まずは人事と相談の上で勧めることが重要です。人事に関する業務の効率化について、以下の記事もご参考になさってください。
その2. 労務管理でトラブルになりやすい部分の把握と対応
労務管理が適切に行われているかを監督するため、企業には不定期で労働基準監督署による監査が入ります。以下に、監査でチェックされやすい5項目と、企業が日頃から行うべき対策をご紹介します:
- 賃金の計算方法が適切か
- 未払いの賃金がないか
- 健康診断の実施が適切に行われているか
- 時間外や休日労働が過重ではないか
- 36協定等を遵守し時間外労働が行われているか
賃金に関しては、法令や、就業規則に則って賃金支払いが行われているかを確認されます。また、未払い賃金や残業に関しては、労働者からの苦情があれば、労働者のメールや、個人の作業記録が確認されることもあります。
つまり企業側は、法令に即して随時、就業規則等を見直すとともに、労働者とは雇用契約書を通じて、労働契約の期間、休日、賃金の計算方法、手当や賞与の有無などを、細かく定めておくことが重要です。
また、残業に関しては、残業を許可制にする、事前事後の残業申告を義務付けるなど、労働時間をきちんと把握できる体制を整えることで、労使トラブルの回避につながります。
労務管理・人事管理を効率的に行うためのデジタルツール
労務管理は、会社が人材を活用する上で重要な意味を持つだけでなく、トラブルを防ぎビジネスを円滑に進めるためにも、欠かせない業務であるということをご紹介しました。
そこで最後に、多忙な管理職の皆様の負担を減らし、労務管理をさらに効率的に行えるデジタルツールを2つ、ご紹介します!
その1. 労務管理システム
労務管理システムは、入社・退社の手続き、給与明細の作成、年末調整手続き、マイナンバー管理、など、労務管理で欠かせない作業を、まとめて一元化できるデジタルツールです。
労務管理システムには、ダウンロードが不要な「クラウド型」と、自社サーバーで管理する「インストール型」があります。労務関連の法律や行政への提出資料は、毎年内容が変わるため、自動で最新情報にアップデートされるクラウド型の方が、管理が容易でお勧めです。
また、システム自体にも、幅広い業務をカバーする「パッケージ型」と、必要な機能だけに絞った「アラカルト型」があります。以下に、クラウド型の労務管理システムの中から、パッケージ型とアラカルト型の代表的なサービスをご紹介します。
パッケージ型:SmartHR、freee人事労務、楽楽労務、等
アラカルト型:jinjer労務、奉行Edge 労務管理電子化クラウド、オフィスステーション、等
実際に、労務管理システムを利用した企業では、入社・退社手続きの作業時間を10分の1に短縮した事例や、社会保険手続きの処理にかかる時間が2分の1に改善した事例もあります。
その2. 電子サインツール
労務管理に欠かせないもう一つのツールは、雇用契約書など、労働者のサインが必要な書類をまとめて電子化できる、電子サインツールです!
労務管理システムは、幅広い業務をデジタル化できる一方で、本人確認ができる電子サインを付与する機能は、備わっていないことがあります。しかし労務管理では、雇用契約書や、時間外労働申請などにおいて、本人証明ができるサインの存在が非常に重要です。
電子サインツールには、Adobe Acrobat Readerの様な無料のPDF編集ツールと、Kdanが提供するDottedSign(ドットサイン)の様な有料の電子サインツールの2種類がありますが、無料のPDF編集ツールは、法的証拠力が弱く、労使トラブルが起きた際、企業に不利な事態を招くリスクがあります。
労務管理では、本人証明が容易であり、2段階認証やタイムスタンプ機能を持つ、専門の電子サインツールを使うことをお勧めします。2つのツールの法的証拠力の違いについては、以下の記事で詳しくご紹介しています。
実際にDottedSign(ドットサイン)は既に世界2,000以上の企業に導入されており、雇用契約書から、人事異動通知、各種申請書まで、労務管理や人事管理に欠かせない資料の電子化などに活用されています。
電子サインツールは、2021年から電子化が解禁された派遣契約書や、外国人労働者の受け入れに必要な契約書のサインにも使えるため、今後ますます活躍の幅が広がるツールです。
現在DottedSignは、14日間の無料トライアルを実施中ですので、ぜひ気軽にトライしてみてください!
今回の記事が、管理職の皆様が効率的に労務管理を進めるためのお役にたてば幸いです!